ガス空調について(1) 〜吸収冷温水機のしくみ〜
2004年8月23日
みなさん、「吸収冷温水機」という言葉を聞いたことはありますか?あまり馴染みのないものなので、ほとんどの方が初めて聞く言葉だと思います。吸収冷温水機とは、ビルなどの大きな建物の冷暖房をする機械です。大規模なビルでは、約6割は吸収冷温水機で冷暖房されているのです。横浜のみなとみらいや、新宿の高層ビル群なども吸収冷温水機を使って冷暖房をしています。
吸収冷温水機は以下の特徴があります。
1.冷媒に水を使用している。
冷媒にフロンではなく水を使用しているため、環境性に優れています。
2.廃熱を利用できる。
吸収冷温水機を動かすための熱源は、主に都市ガスなどを燃焼させた熱を使いますが、他の機械が排出した熱(例えばエンジンの排気ガスや温水)も使用することができるために、地球温暖化防止にも貢献できます。
今回は、吸収冷温水機がどの様にして動いているのか、冷房時の作動原理をご説明します。図は、吸収冷温水機の中でも一番単純な、単効用吸収冷温水機です。吸収冷温水機は、大きく分けて、「蒸発器」、「吸収器」、「再生器」、「凝縮器」の4つで構成されます。これから吸収冷温水機を構成する4要素について解説します。
(1)蒸発器
●蒸発器は、冷房用の冷水を作るところです。
空調機の室内機で冷房に使用されて暖かくなった15℃の冷水は、蒸発器の中にあるチューブの中に流れます。そのチューブに冷媒で水滴を滴下します。蒸発器の中は1/100気圧の真空になっているために、滴下した冷媒がチューブに当たったとき約5℃程度で蒸発します。(気圧の低い富士山の頂上では約80℃で水が沸騰しますが、もっと圧力が低いところでは、さらに温度が低くても水はどんどん気化します。)蒸発したときの気化熱でチューブの中の冷水が冷やされて、約7℃の冷水が作られます。アルコールを肌に塗ったときにひやっとしますが、これと同じ原理です。
(2)吸収器
●蒸発器で気化した水蒸気を吸収するところです。
蒸発器で気化した水蒸気をそのまま放っておくと、蒸発器の圧力が上昇して冷媒が気化しにくくなってしまい冷房能力が下がってしまいます。そこで吸収器では、水を吸収しやすい臭化リチウム水溶液を流して、水蒸気を吸収します。そのため、蒸発器の圧力は、常に低い圧力のまま保たれます。臭化リチウムは、水を吸収するときに発熱するので、冷却水で冷却しながら吸収します。
(3)再生器
●薄くなった臭化リチウム水溶液を濃くするところです。
吸収器で水蒸気を吸収して濃度が薄くなった臭化リチウムは、再生器に送られて都市ガスなどの燃料で加熱されます。加熱された薄くなった臭化リチウムは、吸収した冷媒を水蒸気として分離して元の濃い臭化リチウムに戻り、吸収器に供給されます。
(4)凝縮器
●再生器で分離された水蒸気を水に凝縮する場所です。
再生器で分離された冷媒の水蒸気は、冷却水で冷やされ、液体の水に戻ります。液体の水に戻った冷媒は、蒸発器に供給されます。
以上が、吸収冷温水機の作動原理です。皆さんわかりましたでしょうか?一見、複雑に思われるかも知れませんが、実に単純な原理です。吸収冷温水機の技術開発は日々進められており、現在主流なのは再生器が2つある二重効用型で、非常に効率が高められています。さらに効率を高めた三重効用型も現在開発中です。
普段は皆さんの目に触れることはない吸収冷温水機ですが、ビルに入って冷房の風を感じたときに、「この冷房は吸収冷温水機かな?」と思い出していただければと思います。 松前 和則
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