温故知新。土間空間の新たな魅力
古くからあるものに目を向けてみると、意外に新鮮で便利だったということに気付かされます。
故きを温ねて新しきを知る・・・昔ながらの住まいには、今の暮らしにも通用する、利便性に優れたものがたくさんあります。今回はその一例として、最近デザイナーズ系賃貸マンションでも見かけるようになった「土間」空間の魅力を、OZONE家づくりサポートの菅野氏に教えていただきました。
魅力的な土間空間のポイントは?
- ● 自分たちの暮らしに合った使い方を考慮して土間を取り入れる。
- ● 多目的スペースとして活用する。
- ● 他のスペースと上手に組み合わせる。
- ● 寒さ対策を考えて一年を通して快適な空間にする。
いま、改めて知っておきたい土間空間の魅力
「土間」とは、屋内の床で地面をそのままに、土足で使用する場所を指します。現代の住宅では、床材を貼らずにコンクリートのまま仕上げられた部分を「土間」と呼ぶことが多いようです。
昔の家には広い土間があり、そこは料理の煮炊きをしたり、ご近所さんとおしゃべりしたり、生活に密着した空間でした。靴を脱ぐ習慣をもつ日本人=外と内との境界を意識する私たちにとって、その中間にある土間は、古くから便利な場所として使われてきました。そして、この「半屋外」「半屋内」的な土間空間が今、住まいをさらに魅力的にしてくれる仕掛けとして、改めて注目されているのです。その使い方は、間取りによって、あるいは暮らす人の感性によってさまざま。今回は土間空間を上手に取り入れられている2つのお宅を例に、新たな土間の魅力をお伝えしたいと思います。
解放感を生む土間スペース
まずは都心に暮らすYさんのお宅。半地下階に車庫、1階(道路から見ると2階の高さ)に玄関、そして土間、LDKがあります。1階の床面積は13.8坪。このコンパクトなスペースを、建築家の荒木毅さんはシンプルに三分割し、奥にキッチンと洗濯機、洗面、浴室といった水まわりを一列に。それと並行してリビングダイニング、そして玄関を兼ねる広い土間を配置した間取りに設計しました。
小さめな床面積にかかわらず、玄関を入った瞬間の広々とした感じ、リビングダイニングで過ごす時間の解放感を味わえるのは、この吹き抜けた土間が一役買っていることに間違いありません。
隣家に囲まれた立地のため、最上階をリビングにする案もありましたが、土間上部の吹き抜けから光を取り入れることで下階のリビングを可能にしました。
土間とリビングの間に設けられたリズミカルな柱が、緩やかな間仕切りとなり、玄関からの視線を防ぐ役目も。
「土間のある空間」をイメージするため、荒木さんが過去に設計した建物をあらかじめ見学したというYさん。「そのお宅では、陶芸をしたり、土間が本当に“生きて”使われていました」とすっかり魅了され、自身の家にも土間を取り入れることにしました。
現在Yさんのお宅の土間は、鉢植えのグリーンを置いたり、椅子を置いてその上にもグリーンをのせたりと、緑を愛でるのに活用されています。「敷地の条件的にLDKが2階の高さになるため、庭の緑を窓から眺めることができない。庭のように緑を楽しめて、多少の土や水気で汚れても平気な土間があることがとても良かった」とYさん。土間のある家は、「暮らしに“余裕”があるのがいい」と、その魅力を実感されています。
来客時に都合のいい大きな玄関、日曜大工の場……
土間を多目的空間として活用!
リビング、キッチンに面してつくられた土間。来客にとっても、家族にとっても便利な場に。
つづいて、やはり都心に暮らすAさんのお宅。Aさんの家の敷地は「旗竿型」で、緑豊かなアプローチを抜けて建物に辿り着くと、まず広い土間空間が出迎えてくれます。
この広い土間があれば、大勢の来客の時に靴が散乱しても問題なし!夏に訪れた時には、土間の入口(玄関)の扉が開け放され、心地良い風が通っていました。
Aさんのお宅の土間は、玄関からリビング、その奥のキッチンまでをつなぐ通路も兼ねているのが特徴。料理好きの奥様は土つきの野菜を持ち帰ることもよくあり、そんな時は土間から直接キッチンに野菜を運べるので便利です。
トップライトから降り注ぐ光と土間を通る風で、気持ちの良いリビング。設計者・来馬さんの粋な計らいのダイニングテーブルがAさんのお宅の魅力のひとつに。
土間があることで、キッチンへの動線が室内からと土間からのツーウェイになり、家中を目一杯活用できる結果に。雨の日にはキッチンやリビングにいながら、土間で遊ぶお子さんを見守ることもでき、子育てにも役立っています。
また、コンクリートを打った土間スペースは、室内と違ったハードユースに耐えられるのもメリットのひとつ。Aさんのお宅では、多忙なご主人が貴重な休日の時間に、この土間で日曜大工や自転車のメンテナンスなどを楽しまれています。
また、設計をされた来馬輝順さんの粋な計らいで、この家を建てるために伐採したアカ松で作られた土間の式台と長いダイニングテーブルがあり、広い土間空間にしっくりと馴染んでいます。
いかがでしょう、土間の魅力がお分かりいただけたでしょうか?
今回ご紹介した2つのお宅の事例の他にも、玄関と庭をつなぐ土間、車のガレージ兼用の土間、趣味室としての土間など、住む人の数だけ多彩な使い方の土間空間があります。
家の中で土間を積極的に使おうと考えた場合、冬場に寒いのでは?と躊躇される方もいらっしゃるかもしれません。設計の段階できちんと土間空間の断熱処理をすることで、室内空間と同じように活用することができます。
ぜひ、ご自分の暮らしに合った土間空間を再発見してみてくださいね。